未来のモビリティ社会で生き残るには?

若者の車離れや電気自動車の普及、また未来のモビリティ革命「MaaS」などによって、将来的にガソリン需要の減少が見込まれる中、ガソリンスタンド業界では抜本的な変革が求められつつあります。もうじき創立70年を迎えるヤマヒロでも、中古車販売やディーラー、保険代理業など、新たな事業への挑戦が始まりました。

今回の記事では、ナチュラルローソンやニトリホールディングスの役員、化粧品会社JIMOSのCEO、エトヴォスCOOなどを歴任してきた田岡敬さん(現在は日立グローバルライフソリューションズ執行役員)をインタビュアーとしてお招きし、ヤマヒロ代表・山口寛士の考えるモビリティ社会の未来や、ガソリンスタンド業界の歩むべき方向性に迫りました。

第一線で活躍する経営者やトップマーケターたちが登場するWebメディア「Agenda note」のインタビュアーとしての顔も持つ田岡さんですが、実は山口社長の家庭教師だったという過去も。
「ガソリン需要が減っていく中で、将来についてどう考えている?」インタビューは、再会をよろこぶ場面もつかのま、多くのトップランカーと渡り合ってきたた、かつての恩師による鋭いツッコミからはじまりました。

「脱ガソリン」時代
未来のモビリティはどう変わる?

田岡 ヤマヒロの社長就任から今年で7年。家庭教師として勉強をみていたあの受験生が、今ではすっかりリーダーの風格ですね(笑)。
山口 その節はお世話になりました! 就任から7年、さまざまなことがありましたが、なんとかやっています。

田岡 山口さんが社長に就任したあと、会社としても大きく成長しているのだとか。

山口 数字としてはかなり伸びています。ガソリン自体の価格変動もありますけど、2011年の売上総利益(粗利益)が21億円だったのが、今年は6月時点で33億円。1年あたり1億円以上も上がっていますね。

田岡 勢いありますね。そのうちガソリン事業の売り上げは何割ですか?

山口 売り上げで言うと9割、粗利益だと6割になりますね。

田岡 かなり大きな割合を占めていますね。近年、若年層の車離れや電気自動車の普及などの影響で、長期的に見るとガソリン消費や需要は大幅に減ると言われています。そうした中で山口社長は将来のガソリンの需要についてはどう考えてますか?

山口 そうですね。実際、この一年間でのガソリン販売量は、対前年度で98%と緩やかに下がっていて。この数字については、今後もこんな感じで緩やかに下がっていくと認識しています。

ただ「5年ですべての車が電気自動車に置き換わる」なんてことは起きないですし、日本ではどちらかと言うとハイブリット車を推していることもあり、少なくともこの先10〜20年でガソリン需要がなくなる、ということにはならないでしょうね。

田岡 それは別の言い方をすると、20年後にガソリンは主要なエネルギー源ではなくなっている可能性もある、ということですよね。そういった見込みがある中、ヤマヒロでは今後どのように事業を展開していくのでしょうか?

山口 私たちの事業を考えるとき、常にその可能性を頭に入れておかないとならないんですよ。実は先代の頃からガソリン収益だけに頼らず、レンタカー事業を始めるなどガソリンスタンド以外のさまざまな事業を育てています。

私が社長になってからは、トータル・カーライフ・サポートを念頭に給油だけではなくアフターサービスに力を入れたり、車検整備専門の工場をつくったり、中古車販売やJeepのディーラー、また保険の代理業なども始めました。

ただ、そこで大切なのは、たんに事業を多角化していくのではなく「ヤマヒロが持つ強みを明らかにし何を行っていくか」だと考えています。

田岡 
具体的にヤマヒロの強みとは何なのでしょうか?

山口 大きく2つあります。まずは、東京のガソリンスタンド業界の中でも店舗数を多く持ち、ここ数年はとくにアフターサービスに力を入れているので、顧客接点を頻度高く持てるということ。

いわゆるSSのサービスのほかに、車検や整備などで年間約10000世帯を対応しているので、お客さまとの繋がりや顧客データベースが活きてくるのではないかと。

山口 そして、もうひとつは素直で真面目な社員たちです。たとえば保険の事業では商品が次々に変わっていくので、コンスタントに研修を行い、知識を吸収することが必要です。

ヤマヒロには、お客さまのためにそういった苦労をいとわず、誠実に対応できるスタッフが数多くいる。その点はほかの代理店に比べ、強みを出せると思っています。

田岡 10000世帯! その顧客との繋がりは大きな利点ですね。そして社員の方々へ厚い信頼……。その信頼関係がお客さまとの関係にも繋がっているのだと思います。

田岡 これからもさまざまな新しい取り組みを行っていくと思いますが、20年後にヤマヒロはどんな事業をしていると予想しますか?

山口 将来的に電気自動車もそうですが、未来ではそれよりも自動運転化が進むことのインパクトが大きいと思っています。

「運転手」という存在がいなくなったとき、バスやタクシーと、レンタカーやカーシェアリング……ひょっとしたら運送業やUberのようなサービスまで、全部同じものに変わっていくんじゃないか、と。

そうなったときにでも、ガソリンの需要が完全にゼロになることはないと思いますし、都内に30店舗以上構える都内有数のSSリテーラーとして「無人配車サービス」を提供するのはどうかと思っています。

田岡 「配車サービス」と聞くとメガプラットフォームというか、たとえば自動車メーカーのような大企業にかなり利があると思うのですが。

山口 プラットフォームはそうですね。でも、たとえばそのプラットフォームにおいて車を保管して出庫させる側と考えたらどうでしょう。

私たちとしては、単体でそれを行うのではなく、大手とタッグを組んで自動運転の車を保管場所から車を出庫させたり、お客さまをアテンドをするサービスを行う。

田岡 なるほど。いくら自動運転になるとしても、出庫や車両管理をしたり、サービスを実際に提供するための人は必要ですよね。では、それを実現していくための課題は何だと思いますか?

山口 まず、新しく生まれる無人化のサービスはヤマヒロ単体では成り立たないので、必ず手を取り合って事業を行っていかないといけないということ。

同業他社さんはもちろん、私たちのビジネスパートナーである出光興産さんなんかもやはり「このままではまずい」という認識は共通しているので、来たるモビリティの未来に向けて業界全体で一丸となって開拓していくことがたいせつですね。

もう一つの課題は、事業が拡大していく中で社員のマネジメントが、ガソリンスタンド一本でやっていた時代よりも、ずっと難しくなっているということです。これに関しては、幹部の育成であったり、私自身のスキルをあげていく必要もあると思っています。現在、会社をより良くするためにと取り組んでいる「経営品質向上活動」は、幹部にとってマネジメントへの考え方から実践スキルまでを体系的に学ぶ場にもなっていると考えています。

また、経営陣は、未来を見据えた経営の着想を得る事も必要です。そこで「まずは自分から」と思い、実際に私自身2年前に、ここ事業構想大学院大学に通って修士を取得しました。修士取得のための学び自体はもとより、大学院にはさまざまな方がいらしゃって多くの刺激をもらったので、いま役員にも勧めて通ってもらっているところです。

若手も部長も関係ない 
ヤマヒロで働くおもしろさ

田岡 今後、幅広く事業を展開する上で、ヤマヒロではどのような人材を求めているんですか?

山口 新卒にフォーカスしていうと、学習意欲などの働くモチベーションが高くて素直な人。はじめから会社のビジネスモデルを理解してほしい、なんてことは言いません(笑)。

先輩に言われることをきちんと実行していけば、そこからどんどん新しい仕事を任され、そして新しい仕事を生み出せるような人になれる。ひいては社会人として、また人としても成長していけると私は考えています。

田岡 ヤマヒロに入ると、どんな仕事に携われて、どこにおもしろみを感じられますか?

山口 私たちはあくまで小売業、サービス業ですので、いきなり本社配属になることは少ないですね。事業が増える中で、今後はそのあたりも変えていく必要はありますが、まずは現場で成果を出す、ということに力を注いでもらうことになります。

ただ、最近では現場仕事だけでなく、若手から部長クラスまで部署もバラバラの5人ほどのチームで行う「ワーキンググループ」という活動も行っています。「ワーキンググループ」は、「従業員重視」「独自能力」「社会調和」などチームごとの目的に沿って、会社をよくするための提案を経営陣にする、というものです。

そういった活動を通し、若くして自分のアイデアを会社に採用してもらえたり、さまざまな立場の人と交わえるのは、うちの仕事のおもしろさのひとつなんじゃないかと思います。

田岡 若い人の発想や意見がしっかり上層部に伝わる、いい取り組みですね。若手にとってもやりがいが出てよいことだと思いますが、組織の活性化や会社の新陳代謝を起こす意味でも優れた仕組みだと思います。

田岡 ちなみに山口社長もはじめは店舗勤務されていたと伺いましたが、スタンドでの仕事のおもしろさってどこにあると思いますか?

山口 お客さまとのコミュニケーションではないかと思います。セルフ給油が増えている今、SSにスタッフがいる意味は少なくなってきています。だから私たちはそこに、プラスアルファで何か特化したサービスを提供するよう心がけていて。それが、車検であったりコーティングであったり保険であったりする。

商品やサービスのクオリティはもちろんですが、お客さまに対してきちんと「自分たちがそこに存在する価値」を提供できるようにするには、一つひとつの仕事に対して深い理解が必要なんです。

そういった自分たちの持っている知恵をフルで活用して、最終的にお客さまから「ありがとう」の言葉を直接いただく。これはやはり、スタンドの仕事における大きな醍醐味の一つですよね。顧客と提供サービスを理解し、会社に新しい提案ができるようになるためにも、まずは現場が重要 と考えています。


山口 それからヤマヒロでは、本人の意思や性格などを見て適性は判断していますが、一人ひとりに直接「あなたはここで何がやりたいか」を聞いて、はじめは小さなステップでも、なるべく自己実現してもらえるように努めています。

会社や仕事を通して各々が成長し、自己実現できていければ、これ以上のことはないですよね。
続きを読む【特別対談後編  30年後も変わらぬ強み すべては「ヤマヒロでよかった」のひと言ために

事業構想大学院内にて対談と撮影

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